生まれて間もなく母をなくした幼子が優しい大人達(親達)に育てられていく物語。
その女の子は大切にされ、愛され、素直に逞しく育っていく。
だが、世の中というか子育てってそう簡単にはいかないよ。
と突っ込みたくなる安易さ平易さに不満を持ちながら最後まで読んだ。
これ本屋大賞受賞作品。面白いかもと図書館にリクエストして、リクエストしたことすら忘れたころに読めた本だった。読まなきゃ勿体ない。

今も、パートナー(伴侶)は要らないんだけど子供は欲しいという声を聞くことがある。
親は我が子を何ものにも代えがたい"かけがえのないもの"神様に与えてもらった宝だと感じることは確かに多々ある。
でも、人間の子供である"こども"は親が思うようにはなかなか育たない。
反抗もすれば、とんでもないことを言ったりしたりもする。
この子は悪魔が私に与えたのかと思うことすらあるのが子育てだ。
そんな神様と悪魔の間を行きつ戻りつしながら格闘し、疲れ果てる親はこの小説には出てこない。
親としての責務を全うしようとし、そこに喜びを感じる親たちが4人登場する。
子育ては確かに生き甲斐になる。
自分以上に大切な存在に思えるそれを育む幸せ。
作者は読者にそれを伝えたかったのかな?
確かに子育てしている時が人生で一番充実していたと思う。
思い返せば一番輝いていた。
生き物として命を繋ぐことは生命の本質だなと思える時は確かにあった。
ならば命を繋げない生き物は本質を欠いたものなのかと問われれば、それは違うよと言いたい。
人は幸せに生きるために生きている。
その人の幸せは生命の継承ではないところにあり、多くのものに向けられた愛情かもしれない。
自分の子供しか見えていない人ばかりじゃ社会は方向性を間違える。
社会のバランスを保つためにはそういう人間ばかりではなく、多くの視野や価値観をもった人が大切なんだと社会は気付き始めているように、最近感じることが多くなった。
この本の親子は一人を除いて血のつながりが無い。
それでも大切に育てたいと望んだ親が描かれている。
子供を愛せない親がいっぱいいて、苦しく辛い日々を送る子供が世の中にはいる。
かたや愛したいのに、愛する対象に恵まれない人の辛さも世の中にはいっぱいある。
血縁がなくても愛情ある家庭があれば多くの子供が救われるかもしれない。
しかし現実社会では、人の子は簡単に自分の子供にはならない。
里親という制度はあるが審査や資格を厳しく問われそうだし、
こんな私の子供だもん仕方ないわと諦める言い訳もできな状況というのは辛い。
難しい社会問題だ。
将来マッチングアプリで親子になりました。なんて世の中が来るんだろうか。