副題・・・料理も人生も、すべてシンプルに考える生活術
中国北京で生まれ育った中国人。日本人と結婚、二人の子の母で中華料理研究家。
私よりも10歳若いから経済成長始まりの世代だなと思ったが、違った。
中国は文化大革命(1966年〜1976年)の時代、多くの知識人が殺され財産・文化財が焼かれた時代。
国が違えば生まれ育った環境は違う。
国は同じでも歳が10違えばゼネレーションギャップを強く感じることは多い。
私は経済成長前の戦後復興の頃に生まれた。
大正生まれの父、昭和初期生まれの母の質素な暮らしの中で育てられた私の感覚に近いものを感じた。
おこがましいが人としての芯の部分が近いなと感じた。
好みや嗜好は勿論違う。
私はバブル景気に浮かれ、高価な物を当然のように身に着けた世代の人間だ。
この年になってようやく”シンプルに生きようよ”という世の風潮に成る程と思い、慣らされつつある自分を自覚している。
そんな私がウーさんにシンパシーを覚えるのは、幼少期の質素だが豊かだった食生活が根本にあるからではないかと思うのである。
あの時代、高給取りでなければ冷蔵庫は家に無かった。
当然、母は毎日市場に行き、その日に店のおやじが仕入れてきた新鮮な食材を買い、その日のうちに料理し家族に食べさせていた。
朝採れは当然のことだったのだ。
新鮮で野菜は匂いがきつかった。アクが強くて強烈だった。
料理はいつも醤油味で、魚の煮付けに、匂いのキツイほうれん草のお浸し、いりこの匂いが鼻に付く味噌汁。漬物。
お世辞にも美味しい食卓ではなかった。
しかし、新鮮な食材の匂いは確かに体が覚えている。
長らくトマトやキュウリに匂いが無くなっていることに気付かなかったが、近年になってあの独特の匂をかぎ懐かしく嬉しくなった。
この本には、シンプルで美味しい料理がたくさん紹介されている。
中華料理が苦手だったが、これなら作れるぞと思う物が多くある。というより、これは私作ってるよという物が多い。
基本的な考えが近いので、行き着く先が一緒になるという感じ。
ウーさんおすすめの太白ごま油は、数か月前に偶然発見し、これからは油はこれだ!! と思ったのだった。
中華料理のコツのようなもの、知らなかったことも多くあった。
回鍋肉とは肉を再び鍋に戻しいれるという意味があるそうで、豚肉は茹でておいて少しずつ使うのだそうです。
蒸し料理も中華の得意とするところ。
読むと成る程、美味しそう。と早速杉の蒸篭(セイロ)を注文した。
最後に
「人生で大事なことは健康でいること、笑うこと。おいしいものを食べること」と書かれている。
途中、体に聴いて献立するのです。とも仰っている。
そうですね。冷蔵庫に食材を詰め込んで、その中のどれを消費したら効率的かなと考えて選び出している。
そう!古くなってしまった傷みそうなものから使ってしまおうと。
身体が冷えに傾いているから、生姜を使った暖かいスープを作った方が良いな。とか便秘気味だからお芋を使った消化のよい物をというふには考えていない。
頭でっかちは食生活でも私の中で幅を利かせていたらしい。ほんとうに頭で生きてるダメ人間。
皮膚感覚を呼び覚まし、磨かなきゃいけませんね。それが幸せに生きる基本ですね。
読んでいて、”地頭イイ人”だなと思った。
地頭良いの定義は、考察力や判断力などに優れ、自ら考え抜く能力を持っている人のこと。
となっているが、”考え抜く能力”というのでは言葉不足じゃないかと私は思っている。
考え抜く土台というか基礎の部分が日本刀のように鍛えられていてぶれない芯をもつ人のことじゃないかと、そこに考え抜く力が備わるのではないかと思うのだが・・・。
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主婦として反省する点が多いと思わされた本だった。